ホテルは、地震や津波、大雨、台風などの自然災害とは無縁ではありません。
特に日本は地震が多く、ホテルが海沿いや観光地にある場合には、津波への備えも重要になります。
災害が発生すると、ホテルではお客様の安全確保が最優先です。
一方で、ホテルの営業や避難誘導、宿泊者の確認などを支えるために、さまざまなITシステムも利用されています。
普段は当たり前のように使っているITですが、災害によって電源やネットワークが止まると、一気に利用できなくなる可能性があります。
今回は、ホテル情シスの視点から、地震や津波などの災害が発生した場合に、ホテルITへどのような影響が考えられるのかについて考えてみます。
災害時に最優先されるのは「IT」ではなく人命
最初に大切なのは、
お客様と従業員の安全です。
地震や津波などの災害が発生した場合、ITシステムを復旧することよりも、人命の安全確保が優先されます。
そのためホテル情シスも、
「システムを復旧しなければ」
と考える前に、災害対応全体の中でITがどのような役割を持つのかを考える必要があります。
ITはあくまでもホテル運営を支える手段です。
災害時には、
人命 → 安全確保 → 情報伝達 → ホテル運営 → IT復旧
という優先順位を意識することが重要です。
地震がホテルITに与える影響
地震が発生すると、ITシステムにもさまざまな影響が考えられます。
例えば、
- 停電
- ネットワーク機器の停止
- サーバーの停止
- 通信回線の障害
- PCや端末の破損
- UPSの稼働
- Wi-Fiの停止
- 外部サービスへの接続不可
などです。
地震そのものによって機器が壊れるケースだけではありません。
電源やネットワークなど、ITを動かすためのインフラが止まることも大きな問題になります。
津波では「ホテル内のIT設備」そのものが危険になる
津波が想定される地域では、地震とは別の視点も必要です。
津波によって建物や設備が浸水すると、
- ネットワーク機器
- サーバー
- UPS
- 通信機器
- 電源設備
- PC
- プリンター
などが使用できなくなる可能性があります。
特に重要なのは、IT機器がどこに設置されているのかです。
普段は何も問題がなくても、浸水リスクのある場所に重要な機器が集中していれば、災害時に大きな影響を受ける可能性があります。
ホテル情シスとしては、
「この機器が水に浸かったら、ホテルのどの業務が止まるのか?」
という視点で設備を確認することも重要です。
停電するとホテルのITはどうなる?
災害時のITを考えるうえで、電源は非常に重要です。
パソコンやネットワーク機器、サーバーなど、IT機器は電気がなければ動きません。
そこで登場するのが、
UPS(無停電電源装置)
です。
UPSは、停電などの電源異常が発生した際に、接続された機器へ一定時間電力を供給するために利用されます。
ホテルのネットワーク機器など、重要なIT設備にUPSが使われていることもあります。
ただし、
UPSがあるから停電しても大丈夫
というわけではありません。
UPSにも稼働時間には限りがあります。
そのため、
- UPSでどの機器を守るのか
- どのくらいの時間を確保できるのか
- 非常用電源との関係
- 電源復旧後の確認
などを考えておく必要があります。
ネットワークが止まると、さまざまなシステムに影響する
ホテルのITでは、ネットワークが非常に重要です。
PMS、POS、OES、業務用PC、Wi-Fiなど、さまざまなシステムがネットワークを利用しています。
そのためネットワーク機器や通信回線に障害が発生すると、複数のシステムが同時に利用できなくなる可能性があります。
例えば、
「PMSが使えない」
という問い合わせが来ても、PMSそのものが原因とは限りません。
ネットワークが止まっている可能性もあります。
災害時には特に、
「システムが止まった」=「システムそのものが壊れた」
とは限りません。
電源、ネットワーク、通信回線、外部サービスなど、広い範囲で原因を考える必要があります。
Wi-Fiが使えなくなると、お客様への影響も大きい
ホテルではWi-Fiも重要なインフラの一つです。
宿泊者は、
- スマートフォン
- パソコン
- タブレット
などを利用しています。
災害時には、ホテルからの情報を確認したり、家族や会社などと連絡を取ったりするために通信手段が重要になることもあります。
そのため、ホテルWi-Fiが利用できるかどうかは、お客様にとっても重要な問題になる可能性があります。
ただし、災害時には通常のインターネット利用だけでなく、ホテルとして必要な情報提供や避難誘導など、安全面での情報伝達を優先する必要があります。
PMSが使えなくなると何が困る?
PMSはホテルの宿泊業務を支える重要なシステムです。
予約情報や宿泊者情報、客室情報などを管理しています。
災害によってPMSが利用できなくなると、
- 宿泊者情報の確認
- 客室状況の確認
- チェックイン・チェックアウト
- 予約情報の確認
など、ホテルの通常業務に影響する可能性があります。
ただし、災害時には通常営業とは異なる対応が必要になることもあります。
そのため重要なのは、
「PMSが使えない場合、ホテルとしてどう業務を継続するのか」
を事前に考えておくことです。
POSやOESも災害時には影響を受ける
レストランや売店で利用しているPOSやOESも、災害によって利用できなくなる可能性があります。
例えば、
「レストランの注文を入力できない」
「会計ができない」
「端末がネットワークにつながらない」
といった問題です。
この場合も、システムを復旧することだけを考えるのではなく、
システムが使えない間、現場はどう業務を続けるのか
という代替運用が重要になります。
クラウドサービスなら災害に強い?
最近は、ホテルでもクラウドサービスを利用する機会が増えています。
そこで、
「クラウドなら災害が起きても安心なのでは?」
と考えるかもしれません。
確かに、ホテル内にサーバーを設置する方式と比較すると、クラウドサービスには災害対策上のメリットがあります。
しかし、
クラウドだから絶対に止まらない
わけではありません。
ホテル側のインターネット回線が停止すれば、クラウドサービスへ接続できなくなる可能性があります。
つまり、
クラウド側が正常でも、ホテルからアクセスできなければ使えません。
ここがホテル情シスにとって重要なポイントです。
「ホテルから外に出られない」という問題
ホテルのネットワークが正常でも、外部との通信ができなければクラウドサービスなどは利用できません。
特に、ホテルのネットワークでファイアウォールなどによる通信制御を行っている場合には、災害時に必要な通信が確保できるかも考える必要があります。
普段は、
「このサービスだけ使えればいい」
という設計でも、災害時には別の通信が必要になることがあります。
そのため、平常時だけではなく、
「災害時に必要な通信は何か」
という視点も重要です。
災害時の「通信手段」を考える
災害時には、通常のインターネット回線や電話回線が利用できなくなる可能性があります。
そのためホテルでは、
「通常の通信が使えなくなった場合、どうやって情報を伝えるか」
を考えておく必要があります。
ここではITだけでなく、ホテルの防災・危機管理体制との連携が重要になります。
IT担当だけで決めるのではなく、
- ホテル責任者
- 防災担当
- 現場スタッフ
- 総務などの関係部署
と一緒に考えることが必要です。
災害時に情シスが確認したいこと
ホテル情シスとして、平常時から確認しておきたいポイントがあります。
① 重要なIT機器はどこにあるか
ネットワーク機器、サーバー、UPSなどがどこに設置されているのかを把握します。
② 停電した場合どうなるか
どの機器がUPSや非常用電源の対象なのかを確認します。
③ ネットワークが止まったら何が使えなくなるか
PMS、POS、OES、Wi-Fiなど、影響範囲を整理します。
④ インターネットが使えなくなったらどうするか
クラウドサービスなどへのアクセスができなくなった場合の代替手段を考えます。
⑤ システムが使えない場合の代替運用
紙などを利用する場合、復旧後にどのようにシステムへ戻すのかまで考えておきます。
⑥ 復旧の優先順位
すべてのITを同時に復旧できるとは限りません。
そのため、
「何を最初に復旧させるのか」
を事前に決めておくことが重要です。
「ITの復旧順位」を決めておく
災害時には、すべてのシステムを一気に復旧できるとは限りません。
そこで、
優先順位
を考えておく必要があります。
例えば、
- 安全確保に必要な通信・情報伝達
- ホテル運営に必要なネットワーク
- 重要なホテルシステム
- 業務用PCなど
- その他のシステム
というように、ホテルの事業継続計画に合わせて優先順位を設定します。
ただし、具体的な優先順位はホテルの設備や運用によって異なります。
重要なのは、
「災害が起きてから考える」のではなく、平常時に決めておくこと
です。
災害時こそ「紙」が役に立つ
ホテルのIT化が進むほど、
「システムが使えないと何もできない」
という状態になってしまう可能性があります。
そのため、災害時にはアナログな方法も重要です。
例えば、
- 必要な連絡先
- 緊急時の連絡手順
- システム障害時の対応方法
- 重要な機器の一覧
- ネットワーク構成
- 復旧手順
などを、システムが使えなくても確認できる状態にしておくことが重要です。
電子ファイルだけに保存していて、そのパソコンやネットワークが使えなくなってしまったら、必要な情報を確認できません。
災害対策は「バックアップ」だけではない
災害対策というと、
「データをバックアップしておけば大丈夫」
と考えがちです。
もちろんバックアップは重要です。
しかしホテルITの場合、それだけでは十分ではありません。
例えば、
データは無事でも、ネットワーク機器が壊れている。
システムは正常でも、ホテルからインターネットへ接続できない。
バックアップはあるが、復旧するための機器がない。
ということも考えられます。
そのため、
データ
電源
ネットワーク
機器
通信
システム
人
をまとめて考える必要があります。
ホテル情シスだけでは災害対策はできない
災害対策は、情シスだけの仕事ではありません。
ホテルの場合は、
ホテル全体の事業継続
として考える必要があります。
情シスが考えるのは、その中のIT部分です。
例えば、
「このシステムが止まったら、ホテルのどの業務が止まるのか?」
「その業務を止めないためには何が必要なのか?」
「システムが使えない場合の代替方法は?」
という視点です。
ITだけを見るのではなく、ホテルの業務とITをつなげて考えることが重要です。
災害が起きてからでは遅い
地震や津波は、いつ発生するか分かりません。
だからこそ、災害が発生してから、
「ネットワーク機器はどこにある?」
「このシステムは何に依存している?」
「PMSが使えなかったらどうする?」
と考えるのでは遅い場合があります。
平常時に一度、
「もし明日、大きな地震が起きたら?」
と考えてみる。
そして、
「ホテルのITはどこまで使えるだろう?」
と確認してみる。
これだけでも、災害対策の第一歩になります。
まとめ|ホテルITも「もしもの時」を考える
ホテルにとって、災害対策は非常に重要です。
そして、ITもその一部です。
地震や津波が発生すると、
- 停電
- ネットワーク障害
- 通信回線障害
- IT機器の故障
- サーバー停止
- Wi-Fi停止
- PMS・POS・OESなどの利用停止
- クラウドサービスへの接続不能
など、さまざまな問題が発生する可能性があります。
だからこそ、ホテル情シスとして考えておきたいのは、
「システムをどう復旧するか」だけではありません。
「システムが使えなくなったとき、ホテルの業務をどう継続するか」
という視点です。
災害時に最も大切なのは人命と安全です。
そのうえで、ホテルの営業や情報伝達を支えるITを、どのように維持・復旧するのか。
それを平常時から考えておくことが、ホテル情シスにできる災害対策の一つだと思います。
「何も起きない」が一番。
でも、
「何か起きたときに困らない準備をしておく」
ことも、ホテル情シスの重要な仕事です。

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