ホテルでは、お客様が快適に過ごせるように、多くのITシステムが24時間365日動いています。
普段は意識されることがほとんどないホテルのITですが、ひとたび障害が発生すると、フロント、レストラン、客室、バックオフィスなど、さまざまな場所に影響することがあります。
ホテル情シスとして働いていると、
「一般企業のIT障害とは少し違うな」
と感じる場面も少なくありません。
今回は、ホテルのIT障害がなぜ難しいのか、ホテル情シスの現場目線で紹介します。
ホテルは24時間営業だから「明日対応」ができない
一般的なオフィスであれば、営業時間外にメンテナンスや復旧作業を行えることがあります。
しかし、ホテルは違います。
深夜でもチェックインするお客様がいます。
早朝にはチェックアウトするお客様がいます。
客室ではWi-Fiが利用され、フロントや館内のシステムも動いています。
つまり、ホテルには「完全に止めても問題ない時間」がほとんどありません。
そのため、障害が発生した場合は、
「明日対応します」
というわけにはいかないことがあります。
ホテル情シスには、できるだけホテルの営業を止めずに、問題を解決することが求められます。
一つの障害が複数の部署へ影響する
ホテルには、宿泊業務だけではなく、レストランや売店、バックオフィスなど、さまざまな業務があります。
そして、それぞれの業務でITシステムが使われています。
例えば、宿泊業務ではPMSが利用されています。
PMSは、予約やチェックイン、チェックアウト、客室管理などを行うホテルの重要なシステムです。
レストランや売店では、POSが利用されています。
注文業務ではOESなどのシステムが使われることもあります。
さらに、ホテル館内ではWi-Fiや業務用パソコン、プリンターなども利用されています。
ここで難しいのが、これらのシステムが完全に独立しているとは限らないということです。
例えば、ネットワークに障害が発生すると、
「フロントのシステムが使えない」
「レストランのPOSが使えない」
「業務用パソコンからシステムに接続できない」
など、複数の場所から同時に問い合わせが来ることがあります。
一つのネットワーク障害が、ホテル全体の業務に影響する可能性があるのです。
そのためホテル情シスでは、問い合わせを受けたときに、
「この端末だけの問題なのか」
「この部署だけの問題なのか」
「ホテル全体で発生しているのか」
を確認しながら、影響範囲を把握していきます。
「PMSが使えない」はPMSが原因とは限らない
ホテル情シスでよくある問い合わせの一つが、
「PMSが使えません」
というものです。
しかし、PMSが使えないからといって、必ずしもPMSそのものに問題があるとは限りません。
例えば、
- パソコンの問題
- ネットワークの問題
- 認証の問題
- サーバーやクラウド側の問題
- 他システムとの連携の問題
など、さまざまな原因が考えられます。
そのため、いきなり「PMSの障害」と決めつけるのではなく、原因を一つずつ切り分けていきます。
まずは特定のパソコンだけなのか。
他のパソコンでも発生しているのか。
ネットワークは正常なのか。
他のシステムは利用できるのか。
必要に応じて、システムの提供会社にも確認します。
原因を決めつけず、順番に切り分けることが障害対応では重要です。
障害対応は「電話」が一気に増える
障害が発生すると、問い合わせも一気に増えます。
例えば、
「Wi-Fiが使えません」
「システムが開きません」
「レストランの端末が使えません」
「プリンターから印刷できません」
などです。
同じ障害が原因でも、利用している部署によって問い合わせ内容が変わります。
そのため、障害対応をしている間にも電話が鳴り続けることがあります。
まず状況を聞き、影響範囲を確認し、原因を切り分ける。
その一方で、別の問い合わせも入ってくる。
ホテル情シスでは、こうした状況になることがあります。
出張中でも障害対応は始まる
ホテル情シスの場合、出張中だからといって障害対応から離れられるとは限りません。
例えば、別のホテルへ出張して作業をしているときに、
「マルウェアに感染した可能性がある」
という連絡が入ることもあります。
現地へすぐ戻れるとは限らないため、電話で状況を聞き取り、必要に応じてリモート接続で状況を確認します。
出張先でも、
「ホテルのITトラブルは待ってくれない」
ということを実感します。
夜間作業になる理由
ホテル情シスでは、夜間に作業をすることもあります。
例えば、
- UPSの交換
- Wi-Fiの設定変更
- ネットワーク機器の作業
- 業務用パソコンの交換
などです。
こうした作業は、内容によってはネットワークやシステムを一時的に停止する必要があります。
ホテルは24時間営業しているため、できるだけ利用者の少ない時間帯を選んで作業します。
その結果、作業開始が深夜になることがあります。
さらに、
- 現地ホテルとの作業時間の調整
- ゲストへのメンテナンス案内
- 作業前の確認
- 作業後の動作確認
なども必要になります。
夜間作業は、機器を交換して終わりではありません。
ベンダーとの連携もホテル情シスの仕事
ホテルのシステムは、情シスだけですべてを解決できるわけではありません。
システムによっては、提供会社や保守会社への確認が必要になります。
その際に重要なのが、状況を整理して伝えることです。
例えば、
- いつから発生したのか
- どの端末で発生しているのか
- 何台で発生しているのか
- どの操作をすると発生するのか
- 他のシステムは利用できるのか
- すでに確認したことは何か
などを整理します。
障害対応では、
「誰が悪いのか」ではなく「どうすれば早く復旧できるのか」
を考えることが重要です。
ホテル情シスは「復旧」だけが仕事ではない
障害が復旧したら、それで終わりではありません。
同じ障害を繰り返さないために、原因や対応内容を振り返ることも重要です。
例えば、
- 障害原因の整理
- 対応内容の記録
- 再発防止策の検討
- 現地スタッフへの共有
- 設定や運用方法の見直し
などです。
一度発生した障害を、その場だけで終わらせない。
次に同じ問題が起きたときに、より早く対応できるようにする。
これもホテル情シスの重要な仕事です。
「止められないIT」がホテル情シスの特徴
ホテル情シスの仕事を一言で表すなら、
「止められないITを支える仕事」
だと思います。
ホテルでは、お客様が滞在している限り、ITシステムも動き続けます。
もちろん、計画的なメンテナンスでシステムを停止することはあります。
しかし、その場合でも、
「いつ停止するのか」
「どのくらい影響するのか」
「誰が困るのか」
「代替手段はあるのか」
などを考えます。
ホテルの営業への影響をできるだけ小さくする。
それがホテル情シスにとって重要な役割です。
障害が起きないことが一番
ホテル情シスにとって、実は一番うれしいのは、
何も起きないこと
です。
障害が発生しなければ、電話も鳴りません。
夜間作業も必要ありません。
現地へ急いで対応に行く必要もありません。
ホテルのスタッフやお客様が、何も意識せずにシステムを利用できている。
それが一番良い状態です。
しかし、ITシステムを利用している以上、障害を完全になくすことはできません。
だからこそ、障害が起きたときに、できるだけ早く原因を見つけ、影響を最小限にして復旧する。
そして、次の障害に備えて改善する。
それがホテル情シスの仕事です。
まとめ
ホテルのIT障害が難しい理由は、単にシステムが複雑だからだけではありません。
ホテルには、24時間営業という大きな特徴があります。
さらに、
- 多くのシステムが動いている
- システム同士が連携している
- 一つのネットワーク障害が複数部署に影響する
- 障害中も通常業務が続く
- 夜間作業が発生する
- ベンダーとの調整が必要になる
など、さまざまな要素が関係しています。
ホテル情シスは、表からは見えないところで、ホテルのIT環境を支えています。
障害が起きたときだけ注目される仕事ですが、何も起きない日を作ることも大切な仕事です。
「何も起きない」が、ホテル情シスにとって最高の状態。
今日もホテルの営業を止めないために、ITを支えています。


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