ホテルで働いていると、普段何気なく使っているWi-Fiやパソコン。
しかし、その裏側では「ネットワーク」がホテルのさまざまなシステムをつないでいます。
フロントのパソコン。
PMS。
POS。
OES。
プリンター。
業務用Wi-Fi。
客室Wi-Fi。
クラウドサービス。
これらが正常に動作するためには、ネットワークが重要な役割を果たしています。
特に複数のホテルを運営している会社では、1つのホテルだけを見るのではなく、複数の拠点をどのようにつなぐかという視点も必要になります。
ホテル情シスにとって、ネットワークは非常に重要なインフラです。
今回は、ホテルのネットワークについて、ホテル情シスの視点から分かりやすく解説します。
そもそもホテルのネットワークとは?
ネットワークを簡単に説明すると、
パソコンやシステムなどを通信できるようにつなぐ仕組み
です。
ホテルでは、さまざまな機器がネットワークにつながっています。
例えば、
- 業務用パソコン
- プリンター
- PMS
- POS
- OES
- ネットワーク機器
- Wi-Fiアクセスポイント
- サーバー
- クラウドサービス
などです。
普段は意識することがありませんが、ネットワークが正常に動いていることで、これらの機器やシステムを利用できます。
ホテルではネットワークが止まると影響範囲が大きい
一般的なオフィスでネットワーク障害が発生した場合でも、もちろん業務に影響します。
ホテルの場合は、それに加えて宿泊者へのサービスや現場業務にも影響する可能性があります。
例えば、
「フロントのパソコンがつながらない」
という問題が発生した場合。
単純にパソコン1台の問題とは限りません。
ネットワークに問題があれば、
- フロント
- レストラン
- バックヤード
- 管理部門
- Wi-Fi
- 各種ホテルシステム
など、複数の場所に影響する可能性があります。
そのためホテル情シスでは、障害が発生したときに影響範囲を確認することが重要になります。
ホテルのネットワークにはさまざまな機器がある
ホテルのネットワークを構成する機器には、さまざまなものがあります。
代表的なものとして、
- ルーター
- ファイアウォール
- L3スイッチ
- L2スイッチ
- 無線LANアクセスポイント
- UPS
- LANケーブル
などがあります。
それぞれ役割が異なります。
例えば、スイッチはネットワーク機器やパソコンなどを接続するために使われます。
無線LANアクセスポイントは、スマートフォンやパソコンなどをWi-Fiへ接続するために使われます。
ファイアウォールは、ネットワーク間の通信を制御する重要な役割を持っています。
ホテルではネットワークを分けることも重要
ホテルには、さまざまなシステムがあります。
例えば、
- PMS
- POS
- OES
- 業務用パソコン
- Wi-Fi
- プリンター
- 各種機器
などです。
これらを同じネットワークに何でも接続してしまうと、障害やセキュリティの面で問題になる可能性があります。
そこで検討されるのが、
VLANによるネットワーク分離
です。
VLANとは?
VLANは、1つの物理的なネットワークを、論理的に複数のネットワークへ分ける仕組みです。
例えば、
VLAN 10:業務用パソコン
VLAN 20:PMS関連
VLAN 30:POS関連
VLAN 40:従業員Wi-Fi
VLAN 50:ゲストWi-Fi
というように、用途ごとにネットワークを分けることができます。
実際の構成はホテルによって異なりますが、考え方としては、
「全部を一つにつなぐ」のではなく、「必要なものを必要な範囲でつなぐ」
ということです。
ネットワークを分けるメリット
ネットワークを適切に分離することで、いくつかのメリットがあります。
障害の影響を小さくできる
あるネットワークで問題が発生した場合でも、他のネットワークへの影響を抑えられる可能性があります。
セキュリティを高められる
必要のないネットワーク間通信を制限できます。
管理しやすくなる
「このネットワークは何のためにあるのか」が明確になります。
ただし、VLANを分ければ自動的に安全になるわけではありません。
ネットワーク間の通信制御やファイアウォールなども含めて、全体を設計する必要があります。
ホテルのWi-Fiもネットワークの一部
ホテルのネットワークを考えるとき、Wi-Fiも重要です。
ホテルには、
宿泊者向けWi-Fi
と
従業員向けWi-Fi
など、用途の異なる無線ネットワークがあります。
例えば、宿泊者が利用するWi-Fiからホテルの業務システムへ自由にアクセスできてしまうような構成は、セキュリティ上の問題になります。
そのため、
ゲスト用ネットワーク
と
業務用ネットワーク
を分離することが重要です。
ホテルのWi-Fiが遅い場合も、単純に「Wi-Fiが悪い」と決めつけるのではなく、
- アクセスポイント
- スイッチ
- ネットワーク
- 回線
- 接続端末
- 利用状況
など、どこに問題があるのかを切り分ける必要があります。
ホテルからインターネットへ接続する
ホテルでは、インターネットを利用するシステムも増えています。
特に、
- クラウドサービス
- SaaS
- OTA関連システム
- Webサービス
- メール
- 各種オンラインサービス
など、外部サービスとの通信が必要になるケースがあります。
一方で、ホテルのネットワークではセキュリティ上の理由から、すべての通信を自由に許可しているとは限りません。
例えば、ファイアウォールで通信先を制御し、必要な接続先だけを許可するという考え方があります。
新しいクラウドサービスを導入するときには、
「インターネットにつながっているから使える」
ではなく、
「必要な通信が許可されているか」
を確認する必要があります。
複数ホテルを運営する場合は「拠点間接続」が必要になる
ここからが、複数ホテルを運営する場合の重要なポイントです。
例えば、会社が複数のホテルを運営しているとします。
それぞれのホテルには、
- PMS
- POS
- 業務用パソコン
- ネットワーク
- Wi-Fi
- プリンター
などがあります。
さらに、本部や管理部門などの拠点がある場合、それぞれの場所をネットワークで接続する必要が出てくることがあります。
これが、
拠点間接続
です。
拠点間接続とは?
拠点間接続とは、その名前の通り、
離れた場所にあるネットワーク同士を接続すること
です。
例えば、
ホテルA
↓
ホテルB
↓
ホテルC
↓
本部
というように、それぞれの拠点を通信できる状態にします。
実際にはさまざまな構成がありますが、専用線やVPN、SD-WANなどの技術が利用されることがあります。
VPNを利用した拠点間接続
複数拠点をつなぐ方法の一つがVPNです。
VPNは、インターネットなどのネットワーク上に、暗号化などの仕組みを使って安全な通信経路を構築する技術です。
例えば、
ホテルA
↓
インターネット
↓
VPN
↓
本部
というような接続を構築できます。
ただし、VPNにもさまざまな方式があり、実際の構成は必要なセキュリティや通信要件、既存設備などを考慮して決定します。
複数ホテルをつなぐと「障害の影響範囲」も考える必要がある
複数拠点をネットワークで接続すると、便利になる一方で、新しい課題も出てきます。
例えば、
拠点Aのネットワーク障害
が、
拠点Bや本部のシステムに影響する
ということも考えられます。
つまり、ネットワークをつなぐことで、
便利になる
一方、
障害時の影響範囲が広がる可能性がある
ということです。
ホテル情シスとしては、ここを意識する必要があります。
「つながること」だけを考えてはいけない
ネットワーク設計では、
「全部つなげば便利」
という考え方だけでは不十分です。
重要なのは、
どこからどこまで、何のためにつなぐのか
です。
例えば、
「ホテルAから本部の特定システムだけ利用したい」
のであれば、
ホテルAと本部のすべてのネットワークを自由に通信させる必要はありません。
必要な通信だけを許可するという考え方が重要になります。
複数ホテルでは「共通化」も重要
複数のホテルを管理する場合、各ホテルのネットワーク構成を可能な範囲で標準化することも重要です。
例えば、
- ネットワーク機器の構成
- IPアドレス設計
- VLAN設計
- Wi-Fi構成
- 機器名称
- 管理方法
- 障害対応手順
- ネットワーク構成図
などです。
すべてを完全に同じにできるとは限りません。
ホテルの規模や建物の構造、導入されているシステムなどによって違いがあるためです。
それでも、可能な範囲で標準化しておくと、情シスにとってメリットがあります。
「あのホテルだけ構成が違う」が一番大変
複数拠点を管理していると、
「このホテルだけネットワーク構成が違う」
ということが起こりがちです。
そして数年後、
「なぜこの設定になっているのか分からない」
という状態になることがあります。
これはホテル情シスにとって非常に困ります。
担当者が変わったときにも、構成を理解できるように、
ネットワーク構成図
や
設定情報
などを適切に管理しておくことが重要です。
ネットワーク構成図は情シスの重要な資料
ホテルのネットワークを管理するなら、ネットワーク構成図を残しておくことをおすすめします。
例えば、
- インターネット回線
- ファイアウォール
- ルーター
- スイッチ
- Wi-Fi
- サーバー
- 各種システム
- 拠点間接続
などを図にしておきます。
障害が発生したとき、
「この機器はどこにつながっている?」
をすぐ確認できるからです。
特に複数ホテルを管理している場合、頭の中だけでネットワークを管理するのは難しくなります。
UPSもネットワークに関係する
ネットワーク機器は電源がなければ動きません。
そこで重要になるのがUPSです。
ネットワーク機器にUPSを接続しておくことで、停電などの電源異常が発生した際に、一定時間電源を確保できる場合があります。
ただし、
UPSがある=ネットワークが止まらない
わけではありません。
UPSの容量やバッテリー状態、接続機器、非常用電源なども含めて考える必要があります。
ホテルのネットワークは、電源設備とも深く関係しています。
ホテル情シスのネットワーク障害対応
ホテルでネットワーク障害が発生すると、情シスは原因を切り分けていきます。
例えば、
① どこで発生しているのか
一部のPCだけなのか。
フロント全体なのか。
ホテル全体なのか。
複数ホテルに影響しているのか。
② 電源は正常か
ネットワーク機器やUPSに異常がないか確認します。
③ ネットワーク機器は正常か
スイッチやルーターなどの状態を確認します。
④ 回線は正常か
インターネット回線や拠点間接続に問題がないか確認します。
⑤ 特定のシステムだけなのか
PMSだけなのか。
POSだけなのか。
Wi-Fiだけなのか。
それとも複数のシステムに影響しているのか。
このように、「どこまで正常なのか」を確認していくことが障害対応の基本になります。
ホテルネットワークで大切なのは「止めない」だけではない
ホテルのネットワークでは、
止めないこと
が重要です。
しかし、現実には故障や障害を完全になくすことは難しいでしょう。
そのため、
「止まったときに、どれだけ早く原因を特定して復旧できるか」
も重要になります。
そのためには、
- ネットワーク構成図
- 機器一覧
- 設定情報
- 連絡先
- 障害対応手順
- バックアップ
- 代替手段
- 復旧優先順位
などを整えておくことが重要です。
複数ホテルのネットワーク管理で情シスが考えたいこと
複数拠点を管理する場合、次のような視点が重要になります。
1.標準化
ホテルごとにバラバラな構成にならないよう、可能な範囲で標準化する。
2.ネットワーク分離
PMS、POS、OES、業務用PC、Wi-Fiなどを適切に分離する。
3.セキュリティ
拠点間でも必要以上の通信を許可しない。
4.冗長化
重要な通信について、障害時の代替手段を検討する。
5.障害時の影響範囲
一つの拠点や機器の障害が、他のホテルへ波及しないか確認する。
6.将来の拡張
ホテルの新設や追加、従業員の増加などを考えて設計する。
7.ドキュメント
ネットワーク構成や設定を後から確認できるようにする。
ホテルのネットワークは「ホテルを支えるインフラ」
ホテルのネットワークは、普段はあまり意識されません。
しかし、
「Wi-Fiがつながらない」
「PMSが使えない」
「POSが通信できない」
「業務用PCからシステムにアクセスできない」
といった問題が発生すると、一気にその重要性が分かります。
さらに複数のホテルを運営している場合は、
ホテル単体のネットワーク
だけではなく、
ホテルとホテル、本部とホテルを含めた全体のネットワーク
として考える必要があります。
まとめ|ホテル情シスにとってネットワークは「見えない生命線」
ホテルには、PMS、POS、OES、Wi-Fi、業務用PCなど、さまざまなITシステムがあります。
そして、それらを支えているのがネットワークです。
ホテル情シスにとってネットワークは、
「パソコンをインターネットにつなぐもの」
だけではありません。
ホテルのさまざまなシステムをつなぎ、業務を支える重要なインフラです。
さらに複数ホテルを運営する場合には、
- 拠点間接続
- VPN
- ネットワーク分離
- セキュリティ
- 障害時の影響範囲
- ネットワークの標準化
- 将来的な拡張
まで考える必要があります。
ホテルが増えれば、それだけネットワークも複雑になります。
だからこそホテル情シスには、
「今、動いているか」だけではなく、「将来も安定して使えるか」
という視点が求められます。
普段は見えない。
でも、止まるとホテル全体に影響する。
ホテルのネットワークは、まさにホテルITを支える見えない生命線です。


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