ホテルの情シスというと、
「システムを管理している部署」
というイメージを持つ人も多いかもしれません。
もちろん、PMSやPOS、OES、ネットワークなどのシステムを管理することは、ホテル情シスの重要な仕事です。
しかし、実際に現場から入ってくる問い合わせは、それだけではありません。
「マウスが動かなくなった」
「パソコンの電源が突然切れた」
「パソコンの動作が遅い」
「Excelファイルを間違って消してしまった」
「Web会議のやり方が分からない」
「レストランのオーダーが飛ばない」
「客室ステータスが更新されない」
など、本当にさまざまです。
ホテル情シスでは、こうした問い合わせを一つひとつ確認し、原因を切り分けながら対応しています。
今回は、ホテルの各部門から実際に想定される問い合わせを例に、ホテル情シスがどのような仕事をしているのかを紹介します。
ホテルにはさまざまな部門がある
ホテルには、一般的なオフィスとは違う特徴があります。
例えば、
- フロント
- 宿泊
- レストラン
- 宴会
- 調理
- 営業
- 予約
- 総務
- 経理
- 人事
- 施設管理
など、さまざまな部門があります。
そして、それぞれの部門で使用しているIT機器やシステムも異なります。
そのため、情シスに寄せられる問い合わせも部門によって変わります。
「マウスが壊れました」
これは比較的分かりやすい問い合わせです。
「マウスが動かなくなりました」
「クリックできません」
「カーソルが動きません」
といった相談です。
原因として考えられるのは、
- マウス本体の故障
- USB接続の問題
- 電池切れ
- Bluetooth接続の問題
- パソコン側の問題
などがあります。
一見すると簡単な問い合わせですが、ホテルでは業務を止めないことが重要です。
フロントのパソコンであれば、マウスが使えないだけでも業務に支障が出る可能性があります。
そのため、場合によっては原因を詳しく調査するよりも、
まず代替のマウスを用意して業務を復旧させる
という判断も必要になります。
「パソコンの電源が突然切れました」
これも情シスによくある問い合わせです。
ただし、
「電源が切れた」
だけでは原因は分かりません。
例えば、
- 電源ケーブル
- コンセント
- 電源タップ
- PC本体
- UPS
- ブレーカー
- ネットワーク
- WindowsなどのOS
など、さまざまな可能性があります。
一度だけなら偶発的な問題かもしれません。
何度も発生しているのであれば、別の原因を調査する必要があります。
ホテル情シスでは、単純に「パソコンを交換すれば終わり」とは限りません。
「パソコンの動作が遅い」
これも非常に多い問い合わせです。
「パソコンが遅いです」
と言われても、
何が遅いのか
によって対応が変わります。
例えば、
- Windowsの起動が遅い
- Excelだけ遅い
- 特定のシステムだけ遅い
- インターネットが遅い
- ファイルを開くのが遅い
- パソコン全体が遅い
などがあります。
さらに、ネットワークが原因なのか、パソコン本体が原因なのか、使用しているシステムが原因なのかを切り分ける必要があります。
「遅い」という一言から、原因を探していくのも情シスの仕事です。
「Excelファイルを消してしまいました」
こうした問い合わせもあります。
「間違ってExcelファイルを削除してしまった」
「上書きしてしまった」
「どこに保存したか分からない」
などです。
この場合も、すぐに「復元できません」と判断するのではなく、
- ごみ箱
- 保存場所
- バックアップ
- OneDriveなどのクラウドストレージ
- ファイルの履歴
など、利用している環境に応じて確認します。
重要なのは、
「ファイルを消した」という事実だけではなく、どこに保存されていたファイルなのか
を確認することです。
「Web会議のやり方が分かりません」
最近では、ホテルでもWeb会議を行う機会があります。
しかし、すべての従業員がITに詳しいとは限りません。
「Web会議に参加したい」
「カメラが映らない」
「マイクが使えない」
「音が聞こえない」
「会議室のモニターに映したい」
など、さまざまな相談があります。
こうした問い合わせでは、システム障害というより、
「使い方が分からない」
というケースもあります。
情シスにとっては、これも重要なサポート業務です。
「レストランのオーダーが飛ばない」
ここからホテルらしい問い合わせになってきます。
例えば、
「レストランから厨房にオーダーが飛びません」
という問い合わせ。
これは単純なパソコン操作の問題とは限りません。
ホテルでは、POSやOESなど複数のシステムが連携している場合があります。
例えば、
注文入力
↓
POS・OESなど
↓
ネットワーク
↓
厨房側の端末・プリンター
というように、複数の機器やシステムが関係していることがあります。
そのため、
「オーダーが飛ばない」
という問い合わせだけでは原因を特定できません。
どこまで正常なのかを確認しながら、原因を切り分けていきます。
「客室ステータスが更新されません」
これもホテルならではの問い合わせです。
ホテルでは、客室の状態をシステムで管理しています。
例えば、
- 清掃前
- 清掃中
- 清掃完了
- 点検
- 販売可能
など、ホテルの運用に応じて客室の状態を管理します。
ところが、
「客室ステータスが更新されない」
という問題が発生することがあります。
この場合も、
- 操作端末
- ネットワーク
- PMS
- 客室管理関連システム
- システム間連携
など、複数の原因が考えられます。
フロントと客室管理側の情報が正しく連携されないと、ホテルの業務に影響する可能性があります。
「インターネットにつながりません」
ホテル情シスでは、この問い合わせも重要です。
ただし、
「インターネットにつながらない」
というだけでは原因が分かりません。
例えば、
1台だけつながらない
のであれば、パソコン側の問題かもしれません。
同じ部署のパソコンが全部つながらない
のであれば、ネットワーク側の問題かもしれません。
ホテル全体でつながらない
のであれば、さらに上位のネットワーク機器や回線などを確認する必要があります。
つまり、
「何台が使えないのか」
を確認するだけでも、原因の切り分けに役立ちます。
「プリンターから印刷できません」
プリンター関連の問い合わせも、ホテルでは珍しくありません。
「印刷できません」
「いつもと違うプリンターから出てきました」
「印刷が途中で止まりました」
などです。
これも、
- プリンター本体
- PC
- USB
- ネットワーク
- プリンタードライバー
- 印刷設定
- 印刷サーバー
など、原因はいろいろ考えられます。
単純な紙詰まりなら現場で解決できますが、ネットワークプリンターの場合は、情シスが確認することもあります。
「システムが使えません」
情シスにとって、一番緊張する問い合わせの一つです。
例えば、
「PMSが使えません」
という連絡。
この場合も、
「PMSが故障した」
とは限りません。
ネットワークが原因かもしれません。
パソコンが原因かもしれません。
認証の問題かもしれません。
サーバーやクラウド側の問題かもしれません。
システム間連携の問題かもしれません。
そのため、
「何が使えないのか」
だけではなく、
「どの端末で、いつから、どの操作をすると発生するのか」
などを確認していきます。
問い合わせ対応で重要なのは「切り分け」
ホテル情シスの仕事では、
原因をすぐに当てること
よりも、
原因の範囲を少しずつ狭めていくこと
が重要です。
例えば、
「PMSが使えない」
という問い合わせがあったとします。
まず、
「そのパソコンだけですか?」
と確認します。
もし別のパソコンでは使えるなら、PMS全体の障害ではない可能性があります。
次に、
「ネットワークは使えますか?」
「他のシステムは使えますか?」
などを確認します。
このように、一つずつ確認していきます。
問い合わせの「緊急度」は全部同じではない
ホテル情シスに届く問い合わせは、すべて同じ緊急度ではありません。
例えば、
マウスが壊れた
という問い合わせと、
ホテル全体のPMSが使えない
という問い合わせでは、当然ながら対応の優先順位が違います。
さらに、
宿泊者への影響があるか
という視点も重要です。
例えば、ホテル全体のWi-Fiが使えない場合、お客様への影響が大きくなる可能性があります。
一方、管理部門のパソコン1台の問題であれば、状況によっては少し時間を置いて対応することもできます。
ホテル情シスでは、
影響範囲 × 緊急度
を考えて対応する必要があります。
「ちょっとした問い合わせ」が一番多い?
ホテル情シスの仕事というと、大規模なシステム導入やネットワーク構築を想像するかもしれません。
もちろん、それも重要な仕事です。
しかし、日々の業務では、
「マウスが動きません」
「パソコンが遅いです」
「ファイルが見つかりません」
「Web会議ができません」
といった、細かな問い合わせもたくさんあります。
一つひとつは小さな問題でも、積み重なるとかなりの時間になります。
ホテル情シスは「何でも屋」になりやすい
ホテルには、IT専門の担当者がいる部署ばかりではありません。
そのため、
「パソコンやシステムで困ったら情シスに聞こう」
となりやすいです。
結果として、
ハードウェア
ソフトウェア
ネットワーク
システム
操作方法
アカウント
周辺機器
など、幅広い相談が集まります。
ホテル情シスが「何でも屋」と言われることがあるのは、こうした背景もあります。
問い合わせ対応は「現場を止めない」ための仕事
ホテルでは24時間、お客様へのサービスが続いています。
そのため、情シスにとって問い合わせ対応は単なる「パソコンのお手伝い」ではありません。
例えば、
フロントのシステムが使えない
↓
チェックイン業務に影響
レストランのオーダーが飛ばない
↓
注文業務に影響
客室ステータスが更新されない
↓
客室販売・清掃業務に影響
というように、ITの小さな問題がホテル業務全体に影響することがあります。
だからこそ、問い合わせ一つひとつを軽視できません。
問い合わせ内容から「本当の原因」を探す
ホテル情シスにとって、現場からの問い合わせは貴重な情報でもあります。
例えば、
「最近、パソコンが遅い」
という問い合わせが何度も来るなら、個々のPCの問題だけではなく、ネットワークやシステム全体に何か原因があるかもしれません。
「特定の時間帯になるとシステムが遅い」
のであれば、利用集中など別の原因が考えられます。
一つの問い合わせを解決して終わりではなく、
「同じ問題が繰り返されていないか」
を見ることも情シスには重要です。
問い合わせを減らすことも情シスの仕事
問い合わせに対応するだけでなく、
「そもそも問い合わせが発生しない環境を作る」
ことも重要です。
例えば、
- 操作マニュアルを作る
- よくある質問をまとめる
- パソコンの設定を標準化する
- システムの使い方を教育する
- ネットワーク構成を整理する
- 古い機器を計画的に交換する
- 問い合わせ内容を記録する
などです。
一度発生した問い合わせを、
次からは発生させない
という考え方です。
ホテル情シスに必要なのは「IT知識」だけではない
ホテル情シスとして働いていると、ITの知識だけでは解決できない場面があります。
ホテルの現場が、
「今、何に困っているのか」
を理解する必要があるからです。
例えば、
「POSが使えない」
という問い合わせでも、レストランの営業中なのか、営業時間外なのかによって緊急度は変わります。
「PMSが使えない」
という場合も、チェックイン時間帯なのか、深夜なのかによって影響が違います。
つまり、
IT × ホテル業務
の両方を理解することが、ホテル情シスには求められます。
まとめ|ホテル情シスへの問い合わせは本当にさまざま
ホテル情シスに寄せられる問い合わせは、決して難しいシステム障害だけではありません。
- マウスが壊れた
- パソコンの電源が突然切れた
- パソコンの動作が遅い
- Excelファイルを消してしまった
- Web会議のやり方が分からない
- プリンターから印刷できない
- オーダーが飛ばない
- 客室ステータスが更新されない
- Wi-Fiにつながらない
- PMSが使えない
など、実にさまざまです。
そして、それぞれの問い合わせについて、
「何が起きているのか」
「どこまで影響しているのか」
「原因はどこにあるのか」
「ホテル業務への影響はどの程度なのか」
を考えながら対応します。
ホテル情シスは、システムを管理するだけの仕事ではありません。
現場から寄せられる一つひとつの問い合わせに対応しながら、ホテルの業務が止まらないように支える仕事でもあります。
今日もホテルのどこかで、
「すみません、ちょっとパソコンがおかしいんですが……」
という声が聞こえているかもしれません。
それも、ホテル情シスの日常です。


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